「ワイングラス」は、ワインを飲むために使われるものです。ただ、ワイングラスは、このようなたった一言で説明してしまうにはあまりにも多くの意味と、長い歴史を持っています。
ここでは、「ワイングラスとはそもそもどんなものなのか」「ワイングラスの持っている歴史」について解説していきます。
ワイングラスの歴史について
ワイングラスの起源を特定することは、容易なことではありません。ワイン自体は紀元前にすでに作られていたものですから、ワインを飲むための器自体の歴史はそのあたりにまでさかのぼることができると考えることも可能です。
また、フランスの宮廷文化では昔からワイングラスが使われていました。たとえば、スパークリング用のワイングラスを例にとってみましょう。この時代は、「脚が短くて、ボウル部分が浅くて、かつ口径が広いもの(クープ型)」がトレンドでした。発泡ワインによる「げっぷ」が出にくくエレガントに飲めるからというのがその理由です。ちなみに現在も、宮廷などではこれが使われています。その後に、泡がきれいにでるフルート型のグラスが出て、さらにその後にチューリップ型のものが出てきました。
ただ、ワイングラスを語ろうとするのであれば、やはり「リーデル社」は避けては通れません。
グラスブランドとしての地位を確立しているリーデル社は、1950年代の後半に、大振りなワイングラスを作り上げました。これが現在の主流となっているワイングラスの起源だとされています。
つまり、ワイングラスの歴史は非常に長いものの、現在私たちがよく目にする、「卵型で、大振りなワイングラス」の歴史はわずか70年ほどしかないということになります。
当時のワイングラス、今のワイングラス
9代目となるクラウス・リーデルは、「飲みやすいワイングラス」を追求したことで有名です。香りがよく開き、また飲むときにストレスを感じさせない洋梨型のワイングラスは、当時としては最先端のものでした。飲みやすさはもちろんのこと、斬新で、そして美しいそのデザインは、当時のワイングラス界を席巻していたラッパ状のワイングラスにも大きな衝撃を与えました。
ただ、洋梨型のワイングラスが出たからといって、ラッパ型のワイングラスが駆逐されたわけではありません。ラッパ型のワイングラスは現在も生き続けており、デパートなどでもその姿を見ることができます。
世界初の試み~リーデル社は「ブドウ品種による味の違い」を追求したワイングラスを開発
これは「ワイングラスの種類」とも非常に深くかかわって来る話なのですが、リーデル社がワイングラスに与えた影響はこれに留まりませんでした。むしろ、この後にリーデル社がとった行動が、現在のリーデル社とワイングラス界において大きな転機になったともいえるかもしれません。
それまでのワイングラス界においては、「ワイングラスをブドウの品種によって変更する」という考え方はありませんでした。リーデル社でさえそのような価値観は持っておらず、自社が開発した単一的なワイングラスをフランスをはじめとしたヨーロッパ諸国に売り出すことに自信を持っていたのです。
しかしここで、世界でも1~2位を争うフランスのボルドー地方から声が上がります。
それは、「私たちのところで作られるワインには、このワイングラスは合わない」というものでした。
このときから、「ブドウ品種によって、『一番適したワイングラス』は異なるのではないか」という考え方が生まれたのです。
その後、11代目のマクシミリアン・リーデルが、さまざまな工夫とトライアル&エラーを繰り返していき、「そのブドウ品種に合うワイングラス」を作りだしました(これについては、別記事である「ワイングラスの種類」の項目で詳しくお話しします)。
初めて買うのであればこれがおすすめ!
一番理想的なのは、「ブドウの品種によってワイングラスを選び分けること」です。ただ、現実問題としてこれはなかなか難しいことでしょう。
そのため、1種類だけを買うのであれば、
・少し小さ目で
・脚があって
・中央に少しふくらみがあるが、口径との差が大きすぎない
・口に当たる部分に切り返しがない
ものを選ぶとよいでしょう。小型のボルドー型ともいうべきものであり、もっともはん用性の高い形でもあります。厳密に言えば白ワイン用と赤ワイン用で求められるワイングラスの形は変わってきますが、1つだけで回したいのであればこれを買うとよいでしょう。コノタイプのワイングラスははん用性も高く、安価な値段でさまざまなところで販売されています。
なお、ワイングラスはガラス部分が薄ければ薄いほど口当たりがよくワインを楽しめます。ただこれは非常に割れやすいものですし手入れも大変なものです。初めは気軽に楽しめるワイングラスを選んで、徐々にランクアップしていく方がストレスがたまりません。